「Tile(1, 1)の非周期的タイリングを3種類の五角形を備えたタイリングに変換する」の補足
はじめに
このページの内容は,論文「Tile(1, 1)の非周期的タイリングを3種類の五角形を備えたタイリングに変換する」の補足(暫定版)です.
論文「Tile(1, 1)の非周期的タイリングを3種類の五角形を備えたタイリングに変換する」の図6のクラスタ\(C_{7}(2)\)(論文「A chiral aperiodic monotile, https://arxiv.org/abs/2305.17743」のFigure A.1のStep 2aのクラスタ)内には,「Mystic」と呼ばれた構造があります.図1のようにクラスタ\(C_{7}(2)\)には3個のTile(1, 1)で作られた2個のMysticがあります.
Mysticの形は線対称なので,裏返しても外形は変わりません.したがって,\(C_{7}(2)\)は外形を変えずに,図2のような3つのTypeを作れます.図2のType Aがオリジナルのクラスタ(論文「A chiral aperiodic monotile, https://arxiv.org/abs/2305.17743」のFigure A.1のStep 2aのクラスタ)です.裏返したTile(1, 1)で形成したMystic を使った場合が,図2のType BとType Cです(灰色部分が裏返したTile(1, 1)で形成したMysticに該当します).なお,Tile(1, 1)は裏返しを使うことを許すと,それは論文「An aperiodic monotile, https://arxiv.org/abs/2303.10798v1」のFigure 6.2のように周期的タイル張りを形成できます.
ここでは,図2のType AとType BとType Cのクラスタを基にしたタイリングを,図3の3種類の五角形を備えたタイリングに変換した結果を紹介します(論文「Tile(1, 1)の非周期的タイリングを3種類の五角形を備えたタイリングに変換する」は,Type Aだけの結果です).図3の3種類の五角形は1つの凸形と2つの凹形ですが,すべてを凸形にすることもできます.
なお,正六角形を3等分した鋭角60度の菱形とそれに対応する五角形の向きは一意に決められません.ここで(このページの図4~21)は,タイリングの置換ステップに関わらず鋭角60度の菱形に対応する五角形は,常に同じ向き(図3のアスタリスクがないAnterior side)を使っています.
1番目のパターン
1番目のパターンの各Typeの\(C_{7}(2)\)と\(C_{6}(2)\)に対応するクラスタを,図4と図5に示します.
図4の\(FPC_{7}(2)A\)と\(FPC_{7}(2)B\)と\(FPC_{7}(2)C\)と図5の\(FPC_{6}(2)A\)と\(FPC_{6}(2)B\)と\(FPC_{6}(2)C\)で,2個のMysticに含まれる鋭角30度の菱形に該当する五角形ペアの3つのうちの1つだけがアスタリスクを持たない五角形であることに注目してください.そして,各Typeでそのアスタリスクを持たないペアの位置が異なることに注意してください.1番目のパターンでは,他の箇所の鋭角30度の菱形に該当するペアの五角形はアスタリスクを持っています.
なお,本ページのこれ以降の図と論文「Tile(1, 1)の非周期的タイリングを3種類の五角形を備えたタイリングに変換する」の図7や8などとアスタリスクの関係が逆になっていることに注意してください.論文「A chiral aperiodic monotile, https://arxiv.org/abs/2305.17743」に示された置換方法に従うと置換の度に五角形の向きが変化するため,クラスタやタイリング内の五角形の向きは初期状態に影響されます.このページでは「Tile(1, 1)で作った非周期的タイル張りを3種類の五角形を使ったタイル張りに変換した結果の紹介」の結果を考慮して,図内の五角形の向きを論文「Tile(1, 1)の非周期的タイリングを3種類の五角形を備えたタイリングに変換する」と変えることにしました.
図4.\(FPC_{7}(2)A\)と\(FPC_{7}(2)B\)と\(FPC_{7}(2)C\)
図5.\(FPC_{6}(2)A\)と\(FPC_{6}(2)B\)と\(FPC_{6}(2)C\)
これらクラスタを基にして,置換方法に従ってそれぞれのタイリングを形成した結果が,図6~8です.
置換方法の概略を図9に示しておきます.
\(FPC_{7}(2)A\)と\(FPC_{7}(2)B\)と \(FPC_{7}(2)C\)の違いをわかりやすくしたのが図10で,図11はType AとType BとType Cのタイリングの図を使ったアニメーションです.
2番目のパターン
2番目のパターンの各Typeの\(C_{7}(2)\)と\(C_{6}(2)\)に対応するクラスタを,図12と図13に示します.
図12の\(SPC_{7}(2)A\)と\(SPC_{7}(2)B\)と\(SPC_{7}(2)C\)と図13の\(SPC_{6}(2)A\)と\(SPC_{6}(2)B\)と \(SPC_{6}(2)C\)で,2個のMysticに含まれる鋭角30度の菱形に該当する五角形ペアの3つのうちの1つだけがアスタリスクを持つ五角形であることに注目してください.そして,各Typeでそのアスタリスクを持つペアの位置が異なることに注意してください.2番目のパターンでは,他の箇所の鋭角30度の菱形に該当するペアの五角形はアスタリスクを持っていません.
なお,2番目のパターンのこれらクラスタの形は,論文「Tile(1, 1)の非周期的タイリングを3種類の五角形を備えたタイリングに変換する」と変えています.論文とは異なり,このクラスタを使った置換は重複(や隙間)なくタイリングを形成できます.こちらの場合も論文「Tile(1, 1)の非周期的タイリングを3種類の五角形を備えたタイリングに変換する」の図とアスタリスクの関係が逆になっていることに注意してください.
図12.\(SPC_{7}(2)A\)と\(SPC_{7}(2)B\)と\(SPC_{7}(2)C\)
図13.\(SPC_{6}(2)A\)と\(SPC_{6}(2)B\)と\(SPC_{6}(2)C\)
これらクラスタを基にして,置換方法に従ってそれぞれのタイリングを形成した結果が,図14~16です.
置換方法の概略を図17に示しておきます.
\(SPC_{7}(2)A\)と\(SPC_{7}(2)B\)と \(SPC_{7}(2)C\)の違いをわかりやすくしたのが図18で,図11はType AとType BとType Cのタイリングの図を使ったアニメーションです.
おわりに
上記ではタイリングを同じTypeのクラスタだけを使い各パターンのタイリングを形成しましたが,オリジナルのTile(1, 1)や変換後の3種類の五角形の場合どちらでも,異なるTypeのクラスタを組み合わせた各パターンのタイリングももちろん形成できます.
Tile(1, 1)のクラスタでMysticの部分を裏返す操作は,五角形のクラスタでは図20の2種類のパーツを180度回転する操作に該当します.
したがって, 1つのTypeのクラスタで各パターンのタイリングを形成した後,そのタイリング内の図20のパーツに該当する箇所を置き換えることで,異なるタイリングがいくらでも作れます(図21参照).
もちろん,正六角形を3等分した鋭角60度の菱形に対応する6個の五角形の箇所も自由に裏返すことが可能です(図22参照).
補足
変換に使う3種類の五角形をすべて凸形にした1番目のパターンの結果が図23と図24です.
図23.3種類の凸五角形で形成した\(FPC_{7}(2)A\)と\(FPC_{7}(2)B\)と\(FPC_{7}(2)C\)
図24.3種類の凸五角形で形成した1番目パターンのType Aのタイリング
変換に使う3種類の五角形をすべて凸形にした2番目のパターンの結果が図25と図26です.
図25.3種類の凸五角形で形成した\(SPC_{7}(2)A\)と\(SPC_{7}(2)B\)と\(SPC_{7}(2)C\)
図26.3種類の凸五角形で形成した2番目パターンのType Aのタイリング
変換に使う3種類の五角形をすべて凹形にした1番目のパターンの結果が図27と図28です.
図27.3種類の凹五角形で形成した\(FPC_{7}(2)A\)と\(FPC_{7}(2)B\)と\(FPC_{7}(2)C\)
図28.3種類の凹五角形で形成した1番目パターンのType Aのタイリング
変換に使う3種類の五角形をすべて凹形にした2番目のパターンの結果が図29と図30です.
図29.3種類の凸五角形で形成した\(SPC_{7}(2)A\)と\(SPC_{7}(2)B\)と\(SPC_{7}(2)C\)
図30.3種類の凸五角形で形成した2番目パターンのType Aのタイリング
変換に使う3種類の五角形を凹五角形と凸五角形と(五角形が退化した)台形にした1番目のパターンの結果が図31と図32です.
図31.凹五角形と凸五角形と(五角形が退化した)台形で形成した\(FPC_{7}(2)A\)と\(FPC_{7}(2)B\)と\(FPC_{7}(2)C\)
図32.凹五角形と凸五角形と(五角形が退化した)台形で形成した1番目パターンのType Aのタイリング
変換に使う3種類の五角形を凹五角形と凸五角形と(五角形が退化した)台形にした2番目のパターンの結果が図33と図34です.
図33.凹五角形と凸五角形と(五角形が退化した)台形で形成した\(SPC_{7}(2)A\)と\(SPC_{7}(2)B\)と\(SPC_{7}(2)C\)
図34.凹五角形と凸五角形と(五角形が退化した)台形で形成した2番目パターンのType Aのタイリング
変換に使う3種類の五角形を1種類の凹五角形と2種類の凸五角形にした1番目のパターンの結果が図35と図36です.
図35.1種類の凹五角形と2種類の凸五角形で形成した\(FPC_{7}(2)A\)と\(FPC_{7}(2)B\)と\(FPC_{7}(2)C\)
図36.1種類の凹五角形と2種類の凸五角形で形成した1番目パターンのType Aのタイリング
変換に使う3種類の五角形を1種類の凹五角形と2種類の凸五角形にした2番目のパターンの結果が図37と図38です.
図37.1種類の凹五角形と2種類の凸五角形で形成した\(SPC_{7}(2)A\)と\(SPC_{7}(2)B\)と\(SPC_{7}(2)C\)
図38.1種類の凹五角形と2種類の凸五角形で形成した2番目パターンのType Aのタイリング
変換に使う3種類の五角形を(五角形が退化した)台形と2種類の凸五角形にした1番目のパターンの結果が図39と図40です.
図39.(五角形が退化した)台形と2種類の凸五角形で形成した\(FPC_{7}(2)A\)と\(FPC_{7}(2)B\)と\(FPC_{7}(2)C\)
図40.(五角形が退化した)台形と2種類の凸五角形で形成した1番目パターンのType Aのタイリング
変換に使う3種類の五角形を(五角形が退化した)台形と2種類の凸五角形にした2番目のパターンの結果が図41と図42です.