凸五角形タイル張り問題(平面充填凸五角形問題)
凸多角形による平面のタイル張り(タイル貼り,タイリング,テセレーション,敷き詰め,tiling, tessellation)の研究において,一種類の合同図形のみでタイル張り可能な凸多角形タイル(平面充填凸多角形,凸多角形モノタイル)の網羅・分類を目指す問題があります.
なお,すべてのタイルが同じサイズで同じ形状のタイル張りを,「モノヘドラル(monohedral)」と呼びます.モノヘドラルのタイル張りでは裏返したタイル(裏向きタイル)を使うことが許されます.つまり,モノヘドラルのタイル張りは,表向きと裏向きのタイルを同じ種類として扱います(タイルの種類は1種類という考えです).モノヘドラルのタイル張り可能なタイルは,「モノタイル(monotile)」と呼ばれます.
内角和が \( 360^ \circ \) を整除できる三角形と四角形(凹も含めて)はすべて多角形タイル(平面充填形,モノタイル)で,凸六角形タイルはTypeと呼ばれる3つのファミリーに分類でき,七辺以上の凸多角形タイルは存在しないことが知られています.そして,凸五角形タイルは,Typeと呼ばれる15のファミリーが現在知られています.
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注意1:上記で「ファミリー」という用語を使っているは,「3種類の充填凸六角形」や「3タイプの充填凸六角形」などとすると,ある決まった形状(固定形状)の凸六角形が3種類(3タイプ)あると勘違いされることが多いと感じるからです.平面充填凸多角形(凸多角形タイル,凸多角形モノタイル)で示されているType(タイプ)と名付けられた分類の基準では,ある決まった形状の多角形を通常は指していません(ただし,一部例外もあります).平面充填凸六角形,つまり凸六角形タイルでの3つのファミリーの場合,それぞれが必ず満たしている角度と辺の関係(タイルの条件)が与えられていて,「Type 1」と「Type 2」と「Type 3」という名前が付いています.このようなことから,できるだけ誤解が生じないように表現するために,現在,私は「Type 1ファミリーに属す凸六角形タイル」と表記するようにしています(以前は,「Type 1に属す凸六角形タイル」という表記を良く用いていました).文脈によっては,「Type 1の凸六角形」や「Type 1ファミリーの凸六角形タイル」などとしても誤解は生じないと思いますので,そのように表記することもあります.ですが,それはあくまでも「Type 1ファミリーに属す凸六角形タイル」ということを理解している前提となっています.
注意2:ここでの話が,「凸多角形(凸形)」であることを強調しておきます(多角形内の任意の2点を選んでそれを直線で結んだとき,その直線が必ず多角形内にあるようなものを,凸多角形と言います).凸多角形タイル(凸多角形モノタイル,平面充填凸多角形)の話題を扱っているサイトや動画で,「凸」が省かれている場合を見かけることがあります.「凸」がなくてもとりあえずその場の話題として一応問題がない場合もありますが,例えば「7辺以上の多角形はタイル張り不可能(七辺以上の多角形に平面充填形は存在しない)」と説明しているようなものも見かけたことがあります.この説明は,誤解を生むことになりかねないので注意が必要です.凸形でない,つまり凹形の場合,7辺以上の凹多角形タイル(凹多角形モノタイル,平面充填凹多角形)は存在します.
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凸六角形タイル(平面充填凸六角形,凸六角形モノタイル,タイル張り可能な凸六角形,敷き詰め可能な凸六角形)の3ファミリー,いわゆる平面充填凸六角形の3種類は,下図のリストで確認できます(注:「いわゆる・・・」としている理由は上記の「注意1」を参照).正六角形はその3つのTypeファミリーにすべてに属します.つまり,正六角形はType 1とType 2とType 3のファミリーに属す凸六角形タイルです.凸六角形タイルの各Typeのファミリーは,互いに素ではないです.
上述したように,凸五角形タイル(平面充填凸五角形,凸五角形モノタイル,タイル張り可能な凸五角形,敷き詰め可能な凸五角形)は現在までに,Typeと呼ばれる15のファミリーが知られています.凸六角形タイルの場合と同様に,「15種類の凸五角形タイル(15種類の充填凸五角形)」などとするのは誤解が生じやすいので,ここでも「ファミリー」を用いています.近年まで,これで網羅という証明はなく,唯一未解決問題という扱いでした(2017年にフランスの数学者が既存の15のファミリーしかないという主張の論文を発表しました).この凸五角形の場合を,凸五角形タイル張り問題と呼びます.注意としては,凸五角形タイル張り問題とは,凸五角形タイルのTypeファミリーを分類する(凸五角形が備えている本質的に異なる幾何学的性質に基づいて分類する)問題で,タイルが作る敷き詰め模様を分類することとは違うということです.
凸五角形タイルの15ファミリー,いわゆる平面充填凸五角形の15種類は,下図のリストで確認できます(注:「いわゆる・・・」としている理由は上記の「注意1」を参照).なお,下図のリストの「Type」の順序はほぼ発見順となっています(下図のType 9とType 10の凸五角形タイルが入れ替わっているリストが使われている場合もあります.その経過や理由は「凸五角形タイル(平面充填凸五角形)の発見・研究の経過」にて説明しています).
各Typeと一緒に描かれているタイル張りはそのTypeの代表的なタイル張りで,網掛領域は並進ユニット(平行移動のみで周期的タイル張りを生成するユニット)です.
各凸五角形タイルは辺長と角度の条件で定義されていて,いくらかの自由度も残っています.例えばType 1ファミリーに属す凸五角形モノタイルとは,隣接した3つの内角の和が \( 360^ \circ \),もしくは,残りの隣接した2つの内角の和が \( 180^ \circ \) の関係を満たす凸五角形であり,その関係を上記のリストでは \( A+B+C = 360^ \circ \) と表しています.もう少し詳しいタイルの条件に関する説明を,「凸多角形タイル(平面充填凸多角形)のタイルの条件とは?」にまとめました.(2016年1月号の数学セミナーの私の記事「平面タイル張り可能な凸五角形」の図1では,編集過程のミスでタイルの条件に誤記があるので注意してください).
凸五角形タイルのTypeファミリーは必ずしも互いに素ではないです.つまり,複数のTypeファミリーに属すような凸五角形タイルが存在します.なお,凸五角形タイルには,各Typeファミリーの代表的なタイル張り以外のタイル張りを形成できるものもあります.したがって,上記の図以外のタイル張りが形成できる凸五角形タイルがあっても,それがすぐさま未知のTypeだというような扱いにはなりません.
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この「凸五角形タイルには,各Typeファミリーの代表的なタイル張り以外のタイル張りを形成できるものがある」という性質を利用して,「五角形パズル」をつくったりしています.
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15番目のTypeの凸五角形タイルは,2015年にCasey Mann博士らによって発見されました.14番目の発見から,約30年ぶりの新しいTypeの発見でした.
上記で書いたファミリーを使った表記に従うならばMann博士らの発見した凸五角形は「Type 15ファミリーに属する凸五角形タイル」となるわけですが,この凸五角形の形はサイズ以外に自由度がありません.つまり,「Type 15ファミリーに属する凸五角形タイル(の形)」は1つか存在しないので,まさに「Type 15の凸五角形タイル」であると言えます(誤解が生じません).また,「Type 14ファミリーに属する凸五角形タイル」も,その凸五角形の形はサイズ以外に自由度がありません.
2017年にフランスの数学者Rao博士が,凸五角形タイルは既存の15のファミリーしかないという主張の論文を発表しました.ただし,2025年4月現在,Wikiなどの情報を見るとまだ真に確定していないようにも見えます(この論文が,正式にどこかのジャーナルに掲載されたという情報を聞きません).
凸五角形タイルとそのタイル張りに関するより詳しい話は,私の各論文や英語Wikipedia「Pentagonal tiling」を参照してください.とくに,論文「15のTypeファミリーの凸五角形モノタイル」で,凸五角形モノタイルの「タイルの条件」の考え方に関する詳しい説明を書きました.
凸五角形タイルの発見・研究の経過などの紹介は「凸五角形タイル(平面充填凸五角形)の発見・研究の経過」にまとめました.
私は,ある限定された限定された条件下で凸五角形タイルは既存の8つのTypeファミリーのすくなくとも1つに属すという結果を2012年に得て,発表をしました.それらの簡単な解説は「凸五角形タイル(平面充填凸五角形)の発見・研究の経過」の「限定された条件下でのその他の研究結果の紹介」に書きました.
有限のHeesch数を持つ凸五角形
Edge-to-edgeタイル張り可能な凸五角形の研究を利用して,Heesch数を持つ凸五角形の調査をしています.
タイルTを考えたとき,Tをそれ自身の合同なコピーで隙間やTの境界を除いて重なり無く囲んだ層と中心に置いたオリジナルのT自身を含む集合をTの「コロナ(corona)」と呼びます.ファースト・コロナは,中心にあるタイルと共通の境界点をもつすべてのタイルの集合です.2以上の整数hに関して,h番目のコロナは,(h-1)番目コロナとそれと共通の境界点をもつすべてのタイル((h-1)番目コロナ自身も含む)の集合とります.タイルTのコロナが形成できる層の最大数をTのHeesch数と呼びます.なお,上記で紹介した凸五角形モノタイル(充填凸五角形)のHeesch数は無限という扱いになります.
より詳しいHeesch数に関する説明は,Wikipedia「Heesch's problemを参照してください(注意:2018年10月現在Wikipediaに掲載されている「Ammann's example of a polygon with Heesch number 4」と書かれているのは間違いです.Ammann氏はHeesch数が3のタイルを見つけましたが,Heesch数が4のタイルは見つけていないと思われます.この図は,一番外側にルールが破綻している箇所があります).
2005年に広島大学の阿賀岡先生が「An example of convex heptagon with Heesch number one」にてHeesch数が1の凸七角形を発見しました.この論文内で「接続がedge-to-edgeであるような有限のHeesch数を持つ凸五角形は存在するか?」という問題を示していましたが,それに該当する凸五角形を2015年に見つけました(阿賀岡先生や一部の知り合いの方のみにその結果を公表して,ちゃんとした論文形式では公開していませんでした).この研究はまだ終わっていませんが,2018年にとりあえず1つ論文「Heesch数が正となる凸五角形」としてまとめました.この論文で紹介している1つを,2017年にCraig S. Kaplan博士が見つけて「Heesch Numbers, Part 4: Edge-to-Edge Pentagons」にて紹介しています.
さて,Heesch数が1の凸五角形ですこし面白いものがあることに気づきました.Heesch数が1の凸五角形ですから,その凸五角形の周りを1回しか囲めないのですが,うまく配置すると3個の凸五角形の集団の周りを完全に1回だけ囲むことができるものがいくつかあります.下記の図はその例です(囲み方も1つとは限りません).
このことを踏まえて以下のような問題を考えてみました.
「タイルTが凸形で自身の合同なコピーで1回だけ囲める場合(つまり,TはHeesch数が1である凸形タイルの場合),3個のそのタイルの集団を自身の合同なコピーで1回だけ囲むことができるようなタイルTは存在する.4以上の整数kに関して,k個のタイルTの集団を自身の合同なコピーで1回だけ囲むことができるようなHeesch数が1である凸形タイルTは存在するか?また,kの最大値は何か?」
ちょっとマニアックすぎる問題かもしれません.
球面の充填・被覆の問題
「単位球面上にN個の大きさの等しい球帽(球面上の円)を重ならないように配置したい.球帽の最大角直径を求めよ.最大を与えるときの球帽の配置はどのようなものか?また,そのような的に一通りか?」をTammesの問題(球帽を用配置は本質いた単位球面の最密充填問題)と呼びます.この問題は, N = 1, ..., 14, 24に関してのみ数学的証明を伴った最適解が与えられています.
ここで,角半径 r の球帽に対して,角半径を半分の r/2 にした球帽を半球帽と呼ぶことにします.私は球帽中心が他の球帽内部に存在しないという条件下で,球帽を用いた球面の逐次被覆を行いました.球帽中心が他の球帽内部に存在しないという条件を満たす球帽の球面被覆ならば,それらの球帽を同心の半球帽に置き換えると,半球帽は互いに重なりません.したがって私の球帽の逐次被覆法は,半球帽の球面充填と密接に関連します.
私の球面逐次被覆で の場合を求めた結果,本手法による解とTammesの問題の解が完全に対応しているという興味深い事実を見いだしました.特にN= 10に関して,いままでDanzerによって球帽の角直径が[1.154479, 1.154480]と近似値範囲のみで示されていましたが,私は初めて正確な値を数式で表しました(私の論文の「Packing and Minkowski Covering of Congruent Spherical Caps on a Sphere, II: Cases of N = 10, 11, and 12」や「Exact Value of Tammes Problem for N=10」を参照).
8回対称ペンローズ・タイリングのグラフ測地線を用いた解析
準結晶は,結晶とは違い周期性を持たない構造なので2次元・3次元においてはなおさら様々な角度からの特徴づけが必要となります.そこで,一般の2次元三角形網を特徴づけるものとして小川・ Collinsが導入したグラフ測地線という方法を用いて,8回対称ペンローズ・パターンの解析を試みました.
